東京

北千住から千代田線~山手線と乗り継いで池袋へ、そして池袋から新宿へと向かい、中央線で上野まで戻る。
電車に揺られながら、ひっそりと静まり返った東京を眺めていた。
この街で正月を迎えるのは何度目のことだろう。
人の気配が失われるだけで、こんなにも印象が変わるものかと毎回驚かされる。
街に蔓延る寂しげな雰囲気は淡い単調な暮らしにぽっかりと空いた隙間のようで、時間に追われる日々を幾らか忘れさせてくれる。
公園で凧揚げをしている子供達が無邪気にはしゃいでいる姿。
ベンチに腰掛けながらそれを眺める老人。
電車の進行方向に逆らうように正月の光景がゆっくり後ろへと流されていく。
全ては過去へ。
例え何の変哲もない光景であったとしても、それは一生のうちで一度しか見ることができない。
もう一度と願っても決して適わないことを人は痛みを伴う経験で知る。
出会いと別れ、その繰り返し。そうしてここまでやって来た。
気が付けば、人生の折り返し地点と定めてきた場所はとうに過ぎてしまっている。
今まで何を手にしてきたのだろう。
この先に何を残せるのだろう。
幾ら考えを巡らせてみても、答えが見つかることはない。
ガタ、ゴトン・・・ガタン・・・。
曇り空から差し込む陽光の温もりに目を細めながら、ただ黙って電車に揺られていく。