タバコの煙が燻る部屋の片隅で、
あなたの背中に向かって言葉を投げかけた

曖昧な返事が届けられて、二人の距離が浮き彫りになる
そしてまたあたしは後悔に押し潰されてゆく

どうして問うたのだろう?
答えはわかっていたはずなのに
別れを促すだけなのに

形としての愛を求めてしまった時から、
埋められない溝に気付いていたのかもしれない

傍らで眠るあなたが幸せそうな顔を浮かべるから、
不安で満たされたあたしがなんだか惨めに思えた

二人の間に確かなことが残っているとすれば、
それはこの暮らしが終わりを迎えたということだけ

あなたがあたしを求めたのに
どうしてあなたはしがみ付いて来ないのだろう
どうしてあたしがあきらめ切れないのだろう

遠くでニュースキャスターが独り言を呟いている

関心が無いという事は何よりも残酷だと思う
それが憎悪だろうが愛情だろうが、
打ち寄せられる感情の波を受けて人は存在を証明するのだから

此方を振り向きもしないあなたでは、
零れ落ちる涙に気付くこともできやしない

ねぇ・・・

あたしはどうしていつも、
こうなる前に逃げ出さないのかな

目の前で起こる出来事の全ては、自分で選び取った道で自分で被るべき責任だとしても、
それを素直に受け入れることなどできるわけもない
この濁った空には神様なんて居やしないのだろう

あたしは荷物を纏めるとドアを乱雑に開け放ち、振り返ることなく云った
「せめてこの涙があなたの為に零れれば、少しは自分を許せたのに」

それは悪女にもなれなかった女の棄て台詞