人生の中で、僕はよく待っている。
対象は、物であったり人であったりと様々だが、僕はいつもそれが現れるのを心待ちにしている。

待っていること、それ自体は苦痛ではない。
自分の無意味な人生に、意味を持たせられている気がするからだ。

それが現れたとき、どんな顔をして迎えようか、何から楽しもうか、
僕の頭の中は、そのことで埋め尽くされる。

ただ、待っているときに僕をいつも悩ませるのが、止め時。
待つことを止めた次の瞬間にも、僕が待ち望んでいたものが現れるかもしれない。
例えそれが現れなくても、席を立ってしまったら、今まで待っていた僕を否定することになる。

だから僕はなかなか待つことを止められない。
辛抱強く、それが現れるイメージを描き続ける。

心の何処かでは、もうとっくの昔に諦めている気もする。
万が一、億が一、
そんなことは今の今まで、あった試しがないから。

それでも僕は待つ。
待つ時が長ければ長いほど、それが現れたときの喜びも一入だと信じ、待ち続ける。

煙草の箱が空になっても、
小脇に抱えた本を読み終えても、
その場から立ち上がることは決してしない。
いつか、いつか、いつか。
それだけを楽しみにしながら。

そんな風にいくら強がってみたところで、
やっぱり冷めたコーヒーが美味しくなることはないのだけれど。