2098-12-15 ■ 灯りを消して、月の光に埋れるように暖かい湯の中へと身体を沈める。 バスタブから溢れる音が止むと、辺りはしんと張り詰めた静寂に支配された。 耳を澄ますと遠くから微かなエンジンの音が聴こえてくる。 それが私と世界を結び付ける全てだった。 こんなにも心地よい孤独はいつ以来のことだろう。 この瞬間が失われてしまうことを惜しく思い、息を止めて頭の天辺まで湯に浸る。 生物であることを放棄した私からは余分なものが削ぎ落とされ、やがて無に帰していく。 ああ、そうか。 そういうことだったのか。