葛籠

何だか溢れ出してしまいそうなのです。
きちんと葛籠に仕舞って置いた筈なのに、何時の間にやら彼方此方に散乱してしまい、此処を閉じれば彼処が開くで、なかなか成立してくれない様相。その内に乱れた葛籠の中にも秩序を感じてしまうのは、私に巣くう怠惰がもぞりと首を擡(もた)げたからなのでしょう。
そう云えば、大切なものが見当たらなくても大して支障を来さないことに気付いたのは、あの6月の雨を聞いてからでした。

生きてゆく事に重要なことなど在りましょうか?
あなたが葛籠の隅に仕舞っているものは、いったい何時遣われることやら。