暗室では次々と惨殺死体の写真が現像されていく。
ああ、これはこの間ワイドショーで話題に上った、桜花組組長を殺ったときのネガなんだな。
5コマ前には、女の腰に両手を廻し下卑た笑いをあげる組長が写し出されているのに、5コマ後には、削ぎ落とされた組長の両耳がデカデカと写し出されている。
女がヒステリックに叫んだ。
「なぜこんな写真を撮るんです!?それに…、こんな写真なら戦場でたくさん撮ってきたでしょう。こういう写真が撮りたいなら、また戦場へ行けばいいじゃない。」
「人の死は、日本も戦場も変わんねぇよ。どこで撮るかじゃない。何を撮るか…だ。」
次のネガは、陵辱を受けながら鼻を削ぎ落とされている女子大生。
五体満足でキャンパスを闊歩していた時には、その端正な顔立ちで欲情の視線を一身に集めていただろうに。
「何を撮るの…」
「さっき言っただろ。殺意の量さ。戦場では殺意が少ない。殺人は戦場の日常だからな」
額に銃を押し付けられ、助けを懇願する売女。
薄ら笑いを浮かべる男。
あなたの望むことならなんでもするわ。
じゃあ死んでくれよ。
女が骸になっているネガ…
「でも、こんなもの目の前で見たら、人間として止めるべきでしょ?」
「止める…?」
「その行為は止められても、殺意は止められねぇんだ。他人にはな」
地雷震13巻より